農薬ってなに?
当社独自製剤 豆つぶ®剤
世界人口が増え続ける中、食料生産は世界の課題となっています。気候変動や耕作地拡張の限界、農業従事者の減少などにより農業そのものもさまざまな課題を抱えています。これらの課題の解決に貢献しているのが、私たちが開発している「農薬」です。
日本植物防疫協会の調査によると、農薬を使用しない場合、イネで約24%、リンゴで約97%収穫量が減少することが分かっています。その他の作物においても収穫量の減少と品質低下は避けられません。適切に農薬を使用することが品質・収量の維持を実現し、安全・安心な食生活を可能にしています。
また、農業の省力化や環境負荷の低減にも農薬は大きく貢献しています。かつては1haあたり3kgもの有効成分の散布が必要でしたが、技術の進歩により、現在では1haあたりわずか30gのものもあります。散布の時間や労力が大幅に削減できるだけでなく、有効成分の投下薬量の減少による環境負荷低減、農薬の物流などにおいて使用されるエネルギーや温室効果ガス(GHG)排出量の削減にもつながっています。
強みは研究開発力にあり
当社は、さまざまな分野にわたる農薬開発を一気通貫で行う研究体制を構築しています。新農薬の開発で求められるのは対象とする病害虫や雑草に高い効果を示すことはもちろんですが、農作物への安全性、標的外生物への安全性、環境への影響などさまざまなハードルをクリアする必要があります。
農薬製品を世に送り出すためには膨大な時間とコストが必要で、10年以上、300億円以上かかると言われています。また、候補化合物から農薬製品にできる確率はとても低く、一般的に16万分の1と言われています。それに比べ、当社は約7,500分の1という極めて高い確率で新農薬を開発しています。
これを可能にしている要因は、「幅広い研究領域に対応するための効率的な研究開発体制」「現場に密着したグローバルな市場予想」「これまでの開発ノウハウの蓄積」「積極的な研究開発への投資」「幅広い研究分野に精通する優秀な人財」の5つにあり、これら経営資源を高いレベルで活用できていることが成功につながっていると考えています。
当社ではこれまでに20の農薬原体を開発していますが、これら原体の開発には創薬合成、生物評価、安全性評価、環境影響評価、製剤開発、プロセス開発といったさまざまな分野にわたる複合的な技術力が必要です。現在、これまでの研究開発の蓄積と最新技術との融合を進めており、さらなる研究開発力の強化に向けて日々取り組んでいます。
研究開発は当社にとって成長の源泉であり、開発期間が長期にわたることから、継続的な投資を続けています。当社の研究開発は化学研究所と生物科学研究所が両輪となっており、近年、研究開発力のさらなる強化に向けて、両研究所への積極的な設備投資を進めています。
2023年10月には化学研究所(Shimizu Innovation Park/ShIP)が稼働し、それまで別々に存在していた創薬、製剤、プロセスの3研究センターが統合され、高い専門性を持った化学系研究者が一堂に会し、共創的に研究開発を進められる場が整備されました。(動画参照)
さらに現在、生物科学研究所の改修・更新が進行中で、分野を超えた共創を促し、新たなイノベーションを生む基盤の整備を進めていきます。
また、設備投資だけでなく、人財への投資、開発に必要な試験や知的財産などへの投資も積極的に行っており、研究開発力向上を推進しています。
農薬の正しい知識を広めるために
農薬は食料生産に大きく貢献し、サステナブルな社会を支えるために必要な資材であるにもかかわらず、その社会価値や農薬そのものについて一般消費者の正しい理解が十分に進んでいないという課題があります。この課題に対し、当社では、皆さまに農薬に対する正しい知識や農業への理解を深めていただくため、さまざまな啓発活動を行っています。
2025年7月には、当社コーポレートサイト内に、小学生から大人まで農薬について学ぶことができる「よくわかる!農薬のお話」を新たに開設しました。
「なぜ必要なの?」「健康に悪い?」「環境によくない?」など、知っているようで知らない農薬のあれこれを、分かりやすく紹介しています。
また、2024年度からは「高校生のための食育プログラム 食料生産に関するグループディスカッション」を行っています。〈「食料生産」について考えよう~もし、農薬が世界からなくなったらどうなる?~〉というテーマで、参加校にグループディスカッションとレポート作成をしていただきました。全98グループ433名が参加し、優秀賞に選出されたグループは当社の化学研究所(ShIP)に招待して、研究員との交流会などを行いました。この取り組みは、2025年度も引き続き実施しています。
その他にも、冊子「まもるはなし」シリーズを制作し、現在までに「お米をまもるはなし」「リンゴとミカンをまもるはなし」「トウガラシとジャガイモをまもるはなし」「キャベツとチャをまもるはなし」を発刊しています。作物づくりを通じて農薬の役割について漫画を交えて解説する内容で、学校や農業関連イベントなどでの配布や冊子を活用した出前授業を行っています。
これらの活動を通じ、農薬の正しい情報の発信による企業価値向上、農家の皆様や当社社員が自信を持って農薬を扱えるような環境の醸成を目指しています。