公開
アウトソーシングから共創へ。
企業・福祉・行政をつなぎ、
持続可能な障害者雇用へ
有限責任事業組合障害者雇用促進センター
事務局長 松本忠基
「幼少期より、曲がったことが大嫌い」——。有限責任事業組合 障害者雇用促進センターの事務局長を務める松本忠基氏はそう話します。曲がったことが大嫌いな氏が描く、障害者雇用の未来とは。直面する課題と解決策に迫ります。
障害者雇用促進法が図らずも生み出す、障害者のスキルの選別
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「障害者雇用促進センター」の名称どおり、私たちは障害者の雇用促進を事業としています。障害をお持ちの方が一人でも多く目標を持ち、生活の安定を実現できる雇用の場を整備することを目的に、2024年11月に立ち上げた組織です。
私は幼少期より、曲がったことが大嫌いです。困った人がいると素通りできず、当組合を立ち上げたのも障害者雇用の現状に課題を感じ、「共生社会の実現に貢献したい」という強い思いを抱いたからです。
障害者雇用が抱える課題は多岐にわたり、社会的な偏見や誤解が複雑に絡み合っています。2024年4月に「障害者雇用促進法」が改正され、法定雇用率の段階的な引き上げ、雇用義務の対象が従業員数40人以上の企業に拡大された一方、中小企業の多くは障害者を雇用するだけの体力を持ちません。
それでも法に定められた雇用率を達成し、かつ成果を上げるため、企業は高スキルの人材を求めます。同法の目的は障害者が能力を発揮し、自立した職業生活を送ることにあるにもかかわらず、障害者が選別されているのです。
しかし、この実態を誰が責められるでしょうか。企業の役割は経済活動、つまりは利益の追求です。利益を追求しながら社会貢献をしようと高い志をお持ちの経営者も理念に現実が追いつかず、障害者雇用が法定雇用率達成のための〝数合わせ〟に陥っているのです。
規制強化の陰で苦しむ、福祉と行政
一方、障害者雇用を支援すべき福祉事業所も、監督すべき行政も大きな課題を抱えています。助成金依存の事業構造や不正受給問題を是正するべく、行政は規制を強化したものの、規制強化によって事業所が閉鎖され、数千人規模の障害者が職を失った事例も生じています。その反面、真っ当な福祉事業所は事業の正当性を証明するための労務が増し、本来の支援に割くべきリソースが奪われているのです。
なぜ、こうした事態が起きるのか。それは企業・福祉・行政の間に認識のずれが生じているからではないでしょうか。もちろん、行政による金銭的な支援は重要です。しかし、企業の現場、福祉の現場は、どのような支援を求めているのか——。現場の実態に即した支援が必要です。
企業・福祉・行政を結ぶ橋渡し役として

企業・福祉・行政の間に生じるずれを是正し、三者が適切に連携するための橋渡しをする。これが私たち障害者雇用促進センターの務めです。私たちは法人格を持たない「有限責任事業組合(LLP)※1」の組織形態をとっていますが、その理由は官民を問わず、あらゆる立場・業種の人たちが集い、柔軟な連携が可能だからです。
さらに、私たちは厚生労働大臣が認定する「事業協同組合等算定特例※2」を最大限に活用し、業務の切り出しがしやすい事業者が、切り出しのしにくい事業者の分も含めて障害者を雇用し、全体で雇用率を達成する仕組みを構築しています。
例えば、私は「社会福祉法人 視覚障害者文化振興協会」の理事も務めていますが、同協会が運営するラジオ番組『JBS日本福祉放送』から文字起こし・データ入力・動画編集といった業務を切り出し、障害をお持ちの方の仕事としています。組合の下に多様な組織が集い、工夫を凝らせばこそ、障害者雇用の裾野が広がるのです。 特にAIの普及が急速に進む今、障害者雇用にも新たな可能性が拓かれつつあります。AIによる業務支援ツールを活用したなら、障害をお持ちの方が習得したデータ入力のスキルが入力の枠を超え、より高度で幅広い業務へと拡張していくのです。
可能性が拓かれつつある今こそ、アウトソーシングから共創へ

この機に乗じ、私たちは障害者向けの学習システムを導入し、AIツール活用のスキル習得支援を始めています。システムのデータ分析により、学習の進捗、業務への応用状況、勤怠状況が客観的に可視化され、スムーズな就労移行とキャリアアップにつながります。
しかし、取り組みは道半ば。私たちが掲げる「アウトソーシングから共創へ。~障害者雇用に革新を~」を達成するには、この理念が実現可能であることを示し、実績を積み重ねていかなくてはなりません。
だからこそ、経営者の方には障害者雇用を単なる数合わせにする前に、私たちを頼っていただきたいと思います。「障害者の方を雇用したいけれど…」という経営者の方が抱く正義を守ること。それが私たちの責務です。そして、企業・福祉・行政の間に立ち、持続可能な障害者雇用を実現していくことが共生社会への道のりなのです。
※1有限責任事業組合(LLP):法人格を持たない組織であること、構成員全員が有限責任であること、柔軟な経営が可能であること、構成員課税の適用を受けることを特徴とする組織形態
※2事業協同組合等算定特例:複数の中小企業が事業協同組合等を活用して共同で障害者を雇用し、その雇用人数を各中小企業の実雇用率に通算(合算)できる制度
PROFILE
有限責任事業組合障害者雇用促進センター
- 有限責任事業組合障害者雇用促進センター
- 事業内容障害者雇用促進事業
- 所在地〒103-0007 東京都中央区日本橋浜町2丁目60-8 コンフォート日本橋浜町
- 企業 URLhttps://www.sks-center.co.jp/


